はな
「ああ…やっぱりよく似合うなぁ、アーチャー」
うっとりと…まではかろうじて行かず、しかし限りなくそれに近い恍惚の声。
花、を。
日も昇らぬ早朝に、朝霧に冷えたものを摘んだのだろう。
今昼の光に温み咲きこぼれる花の香りを、かなわぬ四肢がそうさせるのか、嗅覚は鋭敏に感じ取った。
「スイートピーがいいな、ほら、桃色」
そう言って、柔らかで薄い花びらがアーチャーの前髪に掛かるように、丁寧に飾る。
春先の花に縁取られながら、アーチャーは内心毒づく。
(何が、花、だ)
しかし魔力不足の体に抵抗の力はない。ぐったりと柱にもたれ、昼の日差しに温く暖められている。
「デイジーは嫌いか?」
薄く瞳を開いたまま、虚ろな顔を覗く。
当然ながら答えはないが、返る答えなど本当は邪魔だったらしく、気にも留めずに今度は赤い武装をデイジーで飾ってゆく。
(なにを、そんなに、怒って、いるのだか、…?)
とぎれがちな思考。
士郎がなぜ激怒したのか。
終ぞアーチャーにその理由は分からない、分かっていれば士郎もここまで怒りはしない。
「菜の花も蓮華もある、桜も…」
楽しげに埋めて行く、時折じっと顔を覗く。
激昂の代償、絞られた魔力。
そして何故か彼は花を飾る。
埋葬の支度かとも思えるような、アーチャーは半ば諦めている。
そのうち飽きて、魔力を流して私を起こすだろう。それは分かっている、
ただ恐ろしいのは、
「オフェリアだなー」
吐き気がするほど気味の悪いことをほざきながら、花で埋めるその丁寧な仕草、を
ふと、いつまでも…
おわり
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